拝啓 29歳のキャバ嬢へ

29歳 職業:キャバクラ嬢。30歳を目前にし、次の行き先が見えなかったあの頃の自分。夜の世界で出逢った人に生き抜く知恵を学び、昼間の世界で実戦で鍛えて早8年。今、過去の私に何を伝えようか。

何もない 【29歳 冬】 

年末の忙しさも一段落したせいか。

30歳の節目を半年後に迎えたせいか。

 

何とも言えない不安に襲われていた。

十の位が変わるのがこれほど怖いなんて知らなかった。

 

可愛がってくれるお客様はほどほどいてくれたし、伴って収入にも満足していた。

その収入があった故、歌の仕事も楽しむ余裕があった。

 

でも、来年の私の価値は?

いや、半年後、3ヶ月後でさえどうだか。

 

歌が本業だと言いつつ、実質キャバ嬢が本業となっている自分が嫌で嫌でしょうがなかった。

 

でも、私には他にできることはなかったし、正直これまでの生活に不安などなかった。

毎日それなりに生きていたつもりだったけれど、それはただなんとなく居心地のいい方向に流されていただけ。

 

29歳の冬、私はそのことに気づいてしまった。